楽天証券、特典付き社債の購入者情報が漏えいか【2026年10月】
2026年10月31日、楽天証券は、同社が販売した「デジタル特典付き社債」の一部の購入者の情報 延べ362件が、外部に漏えいした可能性があると発表しました。原因は、特典の申込などに使う外部サービスの提供元であるNTTデータの委託先のシステムへの不正アクセスです。

対象はカゴメ・JR西日本・近鉄グループホールディングスの社債3銘柄を買った人の一部で、楽天証券のシステムが不正アクセスを受けたものではありません。ログインID・パスワードや取引に必要な情報も含まれないと報告されており、楽天証券の利用者全員に関わる話ではないという位置づけです。
この記事はこんな人向けです
- 楽天証券の口座を持っていて、自分が対象なのか、何が漏れたのかを知りたい
- カゴメ・JR西日本・近鉄グループHDのデジタル特典付き社債を買ったことがある
- 楽天証券を名乗る偽のメール・SMS・電話に備えておきたい
楽天証券の情報漏えいとは?一言でまとめると
一言でいうと、社債の「特典」の手続きに使っていた外部のシステムに不正アクセスがあり、その社債を買った一部の人の情報が持ち出された可能性があるという事案です。
デジタル特典付き社債は、購入者が発行企業からポイントなどの特典を受け取れる社債です(近鉄グループHDの第135回社債では、KIPSポイントの進呈とペア乗車券の抽選)。NTTデータによると、同社の「STdirectServices」が、社債の購入者に特典を届ける仕組みを支えていました。
| 項目 | 内容(各社の発表) |
|---|---|
| 発生日 | 2026年10月30日(金) |
| 発表 | 2026年10月31日(楽天証券・NTTデータほか) |
| 不正アクセスを受けた所 | NTTデータの委託先が提供する「デジタル証券プラットフォーム」 |
| 楽天証券での対象 | デジタル特典付き社債3銘柄の一部の購入者、延べ362件 |
| 含まれない情報 | 楽天証券のログインID・パスワード、取引に必要な各種情報 |
| 不正取引 | 現時点で本件による不正アクセス・不正取引は確認されていない |
誰が攻撃したか、どう侵入されたかは公表されていません。楽天証券は、NTTデータの委託先で侵入経路や技術的要因を調べているとしています。
経緯:NTTデータの委託先への不正アクセス
楽天証券によると、10月30日に、NTTデータから「デジタル証券プラットフォームに不正アクセスがあり、中の情報が外部に持ち出された可能性がある」と報告を受けました。翌31日に発表しています。
NTTデータも同じ31日に、STdirectServicesを停止したと発表しました。同サービスで使っている委託先のSaaS(インターネット経由で使うソフトウェア)が不正アクセスを受け、個人情報が漏えいした可能性があるとしています。

NTTデータは、いま特典付与の対象になっている社債はないため、停止による特典付与業務への影響はないとしています。近鉄グループホールディングスも、第135回社債の特典(KIPSポイントの進呈とペア乗車券の当選通知)は完了していると案内しています。

対象になるのは誰?3銘柄を買った人の一部だけ
楽天証券での対象は、次の3銘柄を楽天証券で買った人の一部です。合計で延べ362件です。
| 銘柄 | 発行日 | 楽天証券での対象 |
|---|---|---|
| カゴメ 第1回無担保社債 | 2023年2月21日 | 一部の購入者 |
| 西日本旅客鉄道(JR西日本) 第80回無担保社債 | 2024年6月19日 | 一部の購入者 |
| 近鉄グループホールディングス 第135回無担保社債 | 2026年7月24日 | 100万円以上購入した人 |
裏を返すと、この3銘柄を買っていない楽天証券の利用者は、今回の発表の対象に入っていません。株や投資信託、NISA だけを使っている人も同じです。

「延べ362件」は件数で、人数とは限りません。楽天証券の発表には、銘柄ごとの件数は書かれていません。
漏えいした可能性がある情報・含まれない情報
楽天証券の発表には、漏えいした可能性がある情報の項目は書かれていません。一方、社債を発行した各社が、それぞれの社債について項目を公表しています。
| 銘柄(発行会社の発表) | 件数 | 漏えいした可能性がある情報 |
|---|---|---|
| カゴメ 第1回 | 購入者5,472名のうち109名 | 氏名、住所、電話番号、メールアドレス、性別、生年月日 |
| JR西日本 第80回 | 2件 | 氏名、住所、電話番号、メールアドレス、性別、生年月日 |
| 近鉄グループHD 第135回 | 2,678件(100万円以上購入した人全員) | 氏名、第135回社債の購入金額 |
カゴメとJR西日本の分は、住所・電話番号・メールアドレスがそろった連絡先の情報です。近鉄グループHDの分は、氏名と購入金額とされています。
近鉄グループHDの2,678件は、特典を申し込んだ人に限らず100万円以上買った人全員の件数です。この社債は楽天証券以外でも売られており、三菱UFJモルガン・スタンレー証券も同社で買った95名が対象(氏名と購入金額)だと発表しています。楽天証券の延べ362件と、発行会社が示す件数の関係は、どの発表にも説明がありません。
含まれていないとされているのは、次の情報です。
- 楽天証券のログインID・パスワード
- 取引に必要な各種情報
- 証券口座番号(近鉄グループHD・野村證券・三菱UFJモルガン・スタンレー証券の発表)
楽天証券以外の証券会社も発表
同じプラットフォームへの不正アクセスについて、楽天証券以外の証券会社も発表しています。
- 野村證券:デジタル特典付き社債を買った一部の客が対象。漏えいした可能性のある情報の内容は確認中で、対象と分かった人には順次個別に案内する
- 三菱UFJモルガン・スタンレー証券:近鉄グループHD第135回社債を同社で買った95名が対象。情報は氏名と購入金額
どちらも、自社のシステムが不正アクセスを受けたものではない、または同社システムへの不正アクセスは確認されていないとしています。ほかの証券会社で特典付き社債を買った人は、その証券会社の発表を確かめてください。
楽天証券からの連絡はどう届く?
楽天証券は、影響が確認された人に個別に連絡するとしています。
連絡の方法について、カゴメは楽天証券にログインした後の「重要なお知らせ」で知らせていると案内しています。JR西日本は、楽天証券から電子メールその他の適切な方法で連絡しているとしています。
つまり、自分が対象かどうかは、楽天証券に自分でログインして「重要なお知らせ」を見るのが確実です。メールやSMSのリンクからではなく、ブックマークや公式アプリから開くようにしましょう。
楽天証券の発表には、本件専用の問い合わせ窓口は書かれていません。社債の発行会社は、それぞれ窓口を案内しています。
| 発行会社 | 問い合わせ先 | 受付時間 |
|---|---|---|
| カゴメ | 財務・IR部/広報グループ 03-5623-8503 | 月〜金曜日 9時〜17時(土日祝日を除く) |
| JR西日本 | 経営戦略本部 財務部 06-6375-8939 | 平日 9時半〜17時 |
| 近鉄グループHD | 総合政策本部 事業推進部 06-6775-3472 | 平日 10時〜17時 |
楽天証券の利用者がやること
楽天証券の発表と、楽天証券の公式ページの案内をもとに整理します。
① 楽天証券を名乗るメール・SMS・電話を疑う
楽天証券は、本件に関連して楽天証券や関係会社を装った不審なメール、SMS、電話に注意するよう求めています。不審な連絡が来たら、記載のURLにアクセスしない、個人情報を入力しないことが大切です。
JR西日本と近鉄グループHDも、パスワードやクレジットカード情報、暗証番号などを尋ねることはないと明言しています。「漏えいのお詫び」「特典の再送」などを口実に、口座やカードの情報を聞いてくる連絡は詐欺と考えてよいでしょう。
カゴメとJR西日本の分は住所・電話番号も対象です。名前や住所を言い当てられても、本物の連絡とは限りません。
② 対象かどうかは自分でログインして確かめる
前の節のとおり、確実なのは自分でログインして「重要なお知らせ」を確かめることです。迷ったら、届いた連絡ではなく、公式サイトに載っている窓口で確かめましょう。
③ パスキー認証を設定しておく
楽天証券は今回の発表で、フィッシング詐欺への耐性が高い「パスキー認証」の設定を呼びかけています。パスキー認証は、指紋・顔認証やPINなど、端末のロック解除で本人確認する方式です。
公式ページによると、パスキーを使うとログインID・パスワードの入力が要らなくなります。楽天証券は6月から順次、ログイン時のパスキー認証を必須にしている最中で、必須になる時期は人によって違います。まだ設定していない人は、この機会に設定しておくと安心です。
楽天グループでは、楽天カードでも固定パスワードを廃止する動きがあります。

漏えいの連絡を受けたときの一般的な対処は、IPA の案内を紹介した記事にまとめています。

IT Picks的な所感
今回の件は、証券会社そのものではなく、特典の手続きのために使っていた外部のシステムから情報が漏れた可能性がある、という点が特徴です。発行会社3社、販売した証券会社、NTTデータ、その委託先——と関わる会社が多い仕組みの奥で起きており、委託先の管理が利用者からは見えにくいことを改めて示したと思います。
一方で、対象は特典付き社債の購入者の一部に限られ、ログイン情報や取引情報は含まれないとされています。楽天証券の利用者全体が慌てる必要はなく、偽の連絡に乗らないことが一番の対策です。
気になるのは、楽天証券の発表に漏えいした項目が書かれていない点です。発行会社の発表で項目は分かりますが、銘柄ごとの件数や、楽天証券での人数は示されていません。原因と影響範囲の続報を待ちたいところです。
10月は国内で情報漏えいの発表が相次いでいます。旅行会社のクラブツーリズムでも、会員情報 約432万件が漏えいした可能性が発表されました。

まとめ
楽天証券の特典付き社債の情報漏えいのポイントをまとめます。
- 発表日:2026年10月31日(楽天証券・NTTデータ・発行会社各社)
- 発生日:2026年10月30日
- 不正アクセスを受けた所:NTTデータの委託先の「デジタル証券プラットフォーム」(楽天証券のシステムではない)
- 楽天証券での対象:カゴメ第1回・JR西日本第80回の一部の購入者、近鉄グループHD第135回を100万円以上買った人(延べ362件)
- 漏えいした可能性がある情報:カゴメ・JR西日本分は氏名・住所・電話番号・メールアドレス・性別・生年月日、近鉄グループHD分は氏名・購入金額(各発行会社の発表)
- 含まれない情報:楽天証券のログインID・パスワード、取引に必要な情報
- 不正取引:現時点で確認されていない
- やること:楽天証券を名乗る連絡を疑う、ログイン後の「重要なお知らせ」を確かめる、パスキー認証を設定する
3銘柄を楽天証券で買った人は、メールのリンクではなく自分でログインして「重要なお知らせ」を確かめ、しばらくは楽天証券を名乗る連絡に注意しましょう。
