Muse Spark Openとは?動かす条件と料金【2026年10月】
「最新の AI モデルを、クラウドに預けずに手元で動かしたい」——そう考えている開発者にとって見逃せない発表です。
2026年10月15日、Meta が Muse Spark のオープンウェイト版「Muse Spark Open」を公開しました。

オープンウェイトとは、モデルの重み(学習済みのデータ)をダウンロードして、自分の環境で動かせる形で公開することです。Meta は「米国の研究所が出したオープンウェイトモデルで最も高性能」とうたっています。上位モデル Muse Wonder を API で提供している Meta が、再び「手元で動かせるモデル」を出してきた——という位置づけです。
この記事はこんな人向けです
- Meta が公開した「Muse Spark Open」が何なのか知りたい
- 自分の PC やサーバーで動かせるのか、API ならいくらかを確認したい
- 商用で使うときのライセンス条件を押さえておきたい
Muse Spark Openとは?一言でまとめると
Meta の Muse Spark をベースにした、誰でもダウンロードできる大型モデルです。コーディングや、複数の手順をこなす「エージェント」用途に向けて作られています。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 発表日 | 2026年10月15日 |
| 開発元 | Meta(Meta Superintelligence Labs) |
| パラメータ | 総 8,160 億(816B)/1トークンあたり稼働 420 億(42B) |
| 方式 | Mixture-of-Experts(専門家を切り替える方式) |
| コンテキストウィンドウ | 100万トークン |
| 入力 / 出力 | テキスト・画像・動画・音声 / テキスト |
| ライセンス | Muse Model License(条件付きで無償) |
| 入手先 | Hugging Face、Amazon SageMaker AI、Google Cloud Model Garden、Microsoft Foundry Models |
Mixture-of-Experts は、たくさんの「専門家」の部分から1語ごとに一部だけを使う仕組みです。全体は 816B と巨大でも、計算に使うのは 42B 分だけなので、大きさの割に速く動かせるのが特徴です。
発表の概要:何が公開されたのか
Meta によると、Muse Spark Open は 8月に公開した Muse Spark から派生したモデルです。そのままでは安全対策の仕組み(ガードレール)がない環境でも使われるため、悪用への耐性を高める追加の学習を行ったとしています。
公開されたのは次の3つです。
- 重み(BF16 と NVFP4 の2種類): Hugging Face などからダウンロードできる。NVFP4 は容量を抑えた軽量版
- API: Baseten、Fireworks AI、Groq、Modal、Nebius、OpenRouter、Together AI の7社が提供
- 動かすためのソフト: SGLang、vLLM、TensorRT-LLM、Hugging Face Transformers、Apple MLX、llama.cpp、Unsloth が公開日から対応
AMD・Intel による量子化版や、Unsloth の GGUF 版(llama.cpp 向けの形式)も用意されています。公開初日から主要な推論ソフトがそろっているのは、自前で動かしたい人にとって大きな点です。
何が変わるのか:3つのポイント

① 重みが手元に置ける
10月12日に発表された上位モデル Muse Wonder は、API と Muse Code での提供で、重みは公開されていません。Muse Spark Open は重みを自分のサーバーに置けるので、データを外部に送らずに動かす、自社用に追加学習する、といった使い方ができます。
追加学習には PyTorch の TorchTitan のほか、Hugging Face TRL、NVIDIA NeMo AutoModel などが使えるとしています。
② Mac Studio 2台で動く
Meta が特に強調しているのが Apple との連携です。M5 Ultra 搭載の Mac Studio(ユニファイドメモリ 512GB)を2台つなぐと、モデル全体を載せて動かせるとしています。
開発者ブログによると、使うのは軽量版(NVFP4)で、256GB の Mac Studio 4台でも合計 1TB になり動かせるとのことです。Mac 同士は Thunderbolt 5 で直接つなぎ、モデルの各層を2台で半分ずつ計算します。
Meta は、Mac Studio 上で Muse Code(Meta のコーディングエージェント)を動かし、オープンソースの iOS アプリ「Ice Cubes」の修正やビルド、DaVinci Resolve での動画編集までをすべて手元で実行した例を紹介しています。
③ エージェントとコーディング向け
モデルカードでは、主な用途としてエージェント作業・コーディング・ツール呼び出し・画像や動画の読み取りを挙げています。推論の深さは low・medium・high・xhigh の4段階で、既定は最も深い xhighです。コーディングやエージェント作業では high か xhigh、速さを優先するなら low か medium が推奨されています。
ベンチマーク:他のオープンモデルとの比較

Meta は、同じくらいの規模のオープンウェイトモデルと並べた結果を公表しています(Muse Spark Open は推論の深さ xhigh)。
| ベンチマーク | Muse Spark Open | GLM 5.3 | Kimi K3 | Qwen3.8-2.4T |
|---|---|---|---|---|
| MCP-Atlas(ツール利用) | 89.2 | 84.2 | 82.3 | 84.5 |
| JobBench(エージェント作業) | 61.8 | 61.4 | 54.3 | 52.7 |
| HLE-Diamond(知識・推論、ツールなし) | 26.1 | 16.4 | 22.2 | 17.3 |
| Terminal-Bench 2.1(ターミナル作業) | 76.4 | 83.9 | 85.0 | 82.0 |
| DeepSWE 1.1(コーディング) | 60 | 67 | 68 | 57 |
| Artificial Analysis Intelligence Index | 39 | 45 | 44 | 40 |
ツール利用やエージェント作業、知識系では首位です。一方で、ターミナル作業やコーディング、総合指数では GLM 5.3 や Kimi K3 が上回ります。「すべてで勝った」という発表ではない点は押さえておきたいところです。
比較相手はオープンウェイトのモデルだけで、Claude や GPT などの非公開モデルとは比べていません。数値はいずれも Meta の公表値です。
動かすのに必要な環境
手元で動かすハードルは、正直かなり高めです。モデルカードと開発者ブログに書かれた条件は次のとおりです。
| 動かし方 | 必要な環境(公式の記載) |
|---|---|
| GPU(軽量版 NVFP4) | VRAM 700GB 以上 |
| GPU(BF16) | VRAM 2TB |
| NVIDIA TensorRT-LLM | Blackwell 世代 GPU 4基の1ノード(NVFP4) |
| Apple Mac Studio | M5 Ultra・512GB を2台、または 256GB を4台(NVFP4・MLX) |
個人の PC や一般的な VPS で動かせるサイズではありません。まずは API で試し、必要になったら自前の環境を検討するのが現実的です。
AI エージェントからサーバーを操作する仕組みに興味がある人は、こちらの記事も参考になります。

料金・提供状況:日本から使える?
① API の料金(OpenRouter の場合)
| 料金(1Mトークンあたり・米ドル) | Muse Spark Open |
|---|---|
| 入力 | $1.25 |
| キャッシュ入力 | $0.15 |
| 出力 | $4.25 |
※ 2026年10月16日時点の OpenRouter の表示。税の扱いは各社の規約によります。
同じ Muse シリーズの上位モデル Muse Wonder(入力 $4.00・出力 $20.00)と比べると、入力は約3分の1、出力は約5分の1です。
② 重みは無償、ただし申請が必要
重みは Muse Model License のもとで無償で使えます。Hugging Face では利用申請(ゲート)があり、氏名・生年月日・国・所属などを入力してライセンスに同意する必要があります。
③ 日本での提供と日本語
Meta の発表やモデルカードには、国・地域による提供制限の記載はありません。ライセンスも、欧州とそれ以外で契約相手の Meta の会社が変わるだけです。
日本語については、モデルカードで「100以上の言語のデータで学習」としつつ、日本語の名前は挙げておらず、すべての言語で評価したわけではないと書かれています。日本語の業務で使う場合は、出力の品質を自分で確かめる必要があります。
ライセンスの注意点
「オープン」とはいえ、自由に何でもできるライセンスではありません。主な条件は次のとおりです。
- 表示の義務: 製品やサービスの画面・ドキュメントなどに「Built with Muse Spark Open」と表示する
- 大企業の API 提供は別契約: モデルを API などで他社に提供する事業(Model as a Service)で、グループの年間売上が 2,000 万ドルを超える場合は、Meta への通知と別の契約が必要
- 自社製品への組み込みは対象外: 社内利用・研究や、自社サービスの機能として組み込む使い方は、上の売上条件の対象外
- 18歳未満は対象外: 利用ポリシーで、18歳未満の利用は想定していないとしている
- 禁止用途: 違法行為、マルウェアの作成、なりすまし、偽レビューの作成などは禁止
国内の中小企業が自社サービスに組み込むような使い方なら、売上条件にかかることはまずないでしょう。ただし、表示の義務は規模に関係なくかかります。
開発者の反応
海外の技術系コミュニティ Hacker News では、発表の投稿に 798ポイント・398件のコメントが付きました(2026年10月16日時点)。主な声を整理します。
- 「米国で一番」という言い方への注目: 最近のオープンモデルは「世界一」ではなく「米国・欧州で一番」とうたうようになったとして、中国勢のオープンモデルの強さを暗に認めているのでは、という見方がありました(sergdigon さんのコメント)
- 他のモデルに追いつく必要がある: Artificial Analysis の結果では、GPU 1基で動く Qwen や GLM の小型モデルを下回るとして、「Meta はまだ追いつく余地がある」という指摘がありました(a11r さんのコメント)
- ハードの比較は単純ではない: これに対し、Mac Studio と B300(NVIDIA のデータセンター向け GPU)の環境はコストがまったく違い、比べるのは無理があるという反論も出ています(gigatexal さんのコメント)
- ライセンスの読み解き: 「オープンではない」という意見が多いことを受けて、ライセンスを確認した開発者は、売上 2,000 万ドル超の API 提供以外はほぼ自由に使えると整理しています(seizethecheese さんのコメント)
ライセンスの条件と、中国勢のオープンモデルとの差が、議論の中心になっています。
IT Picks的な所感
一番のポイントは、Meta が「手元で動かせるモデル」の路線に戻ってきたことだと思います。直近の Muse Wonder は API での提供のみだったため、Llama のころのように重みを使えるモデルを待っていた開発者には朗報です。
一方で、最高性能のオープンモデルとまでは言いにくいのも事実です。ツール利用や知識系では強いものの、コーディングや総合指数では GLM 5.3・Kimi K3 が上回っています。「米国製であること」を重視する企業向けの選択肢、という性格が強いと評価しています。
日本の読者にとっては、OpenRouter などの API で日本語の出力品質とコストを確かめるのが最初の一歩になるはずです。Mac Studio 2台で動くという話題は魅力的ですが、まずは API で用途に合うかを見てから、自前の環境を検討したいところです。
同じ Muse シリーズで、API 専用の上位モデル Muse Wonder についてはこちらで解説しています。

ChatGPT・Claude・Gemini の使い分けは、用途別の使い分けをまとめた記事が参考になります。
まとめ
Muse Spark Open のポイントをまとめます。
- 発表日:2026年10月15日(Meta)
- モデル:Muse Spark のオープンウェイト版(総 816B・稼働 42B、コンテキスト100万トークン)
- 強み:ツール利用・エージェント作業・知識系で首位。コーディングや総合指数は GLM 5.3・Kimi K3 が上回る
- 動かす環境:VRAM 700GB 以上(NVFP4)、または M5 Ultra の Mac Studio(512GB)2台
- API 料金:OpenRouter で1Mトークンあたり入力 $1.25・出力 $4.25
- ライセンス:無償で利用可。「Built with Muse Spark Open」の表示が必要、売上 2,000 万ドル超の API 提供は別契約
- 日本での提供:地域制限の記載なし。日本語は明記なし
導入を検討する開発者は、まず OpenRouter などの API で、日本語の出力品質とコストを手持ちのモデルと比べるところから始めるとよいでしょう。
