Vercelの高額請求を防ぐには?予算と自動停止の設定【2026年版】
Vercel で Next.js のサイトを公開していて、「アクセスが急に増えたら請求はいくらになるのか」と不安になったことはないでしょうか。
2026年10月23日、Vercel は CLI(コマンドライン)から予算を管理できる vercel budgets を追加しました。予算の設定や「予算に達したら本番を止める」設定、通知の履歴をターミナルから扱えます。10月19日には Hobby・Pro の利用規約も更新され、クレジットの有効期限などが明記されました。

Vercel の Pro プランは、含まれるクレジットを超えると上限なしの従量課金です。この記事では、料金の仕組みと、請求を止めるための Spend Management(利用額の管理)の設定・注意点を整理します。「通知だけ」と「本当に止まる」の違いを押さえておくことが、費用を守る第一歩と言えます。
この記事はこんな人向けです
- Vercel で Next.js などのサイトやアプリを公開している開発者
- Hobby(無料)から Pro に切り替えるか迷っている個人・小規模チーム
- Pro にした後、従量課金の請求がどこまで膨らむのか不安な人
Vercelの料金とは?一言でまとめると
一言でまとめると、Hobby は無料で上限に達すると止まる、Pro は月20ドルで上限なしの従量課金です。
| Hobby | Pro | |
|---|---|---|
| 料金 | 月0ドル | 月20ドル(デプロイできる席1つ込み) |
| 含まれる利用量 | 決まった上限(追加購入不可) | 毎月20ドル分のクレジット |
| 上限を超えると | 機能が止まる(多くは30日待ち) | 従量課金で請求が続く |
| 商用利用 | 不可(個人・非商用のみ) | 可 |
| 予算と自動停止(Spend Management) | なし | あり(追加料金なし) |
※ 料金は米ドル・税別。2026年10月25日時点の Vercel 公式の料金ページ・ドキュメントより。
Pro の追加の席は1人あたり月20ドル、閲覧だけの席は無料です。月額クレジットは未使用分が月末に失効し、翌月に20ドルへ戻ります。
Pro には14日間のトライアル(20ドル分のクレジット付き)もあります。支払い方法を登録しなければ請求されず、終了後は Hobby に戻ります。
2026年10月の変更:CLIから予算を管理できるように
10月23日の更新で、ダッシュボードの「Spend Management」と同じ予算を CLI から操作できるようになりました。使えるのは vercel@59.23.0 以降です(アラート履歴は vercel@65.2.0 以降)。
| コマンド | できること |
|---|---|
vercel budgets |
今月の利用額と、設定中の予算を表示 |
vercel budgets set --amount 50 --pause |
予算を50ドルにし、到達したら本番デプロイを一時停止 |
vercel budgets remove --yes |
予算を削除 |
vercel budgets alerts |
過去の通知(50%・75%・100% など)の履歴を表示 |
公式は、スクリプトや AI エージェントからも予算を扱える点を利点に挙げています。複数のチームを持つ人は、--scope でチームを切り替えて同じコマンドで確認できます。
10月19日の規約の更新では、プランに含まれるクレジットは契約期間の終わりに失効し、購入したクレジットは原則購入から1年で失効することが明記されました。クレジットに現金価値はなく、譲渡もできません。
Hobbyプラン:上限で止まるが、商用利用はできない
Hobby は無料で、上限を超えても請求されません。含まれる利用量は、データ転送(Fast Data Transfer)100GB、関数の呼び出し100万回、Active CPU 4時間などです。
上限を超えた機能は止まり、多くの場合30日待つ必要があります。費用の心配はありませんが、アクセスが集中するとサイトが使えなくなる可能性があります。
注意したいのは商用利用の禁止です。公正利用ガイドラインは、次のようなサイトを商用利用に当たると例示しています。
- 訪問者から支払いを受け付ける
- 商品・サービスの販売を宣伝する
- サイトの制作・更新・ホスティングで報酬を受け取る
- アフィリエイトリンクが主な目的
- Google AdSense などの広告を掲載
寄付の呼びかけは商用に当たりません。ブログに AdSense を貼る、会社や店舗のサイトを置くといった使い方は、Pro 以上が必要です。
Proプラン:月20ドルのクレジットを超えると従量課金
Pro では、データ転送・関数の実行・画像の最適化などの利用額を、まず月20ドルのクレジットから差し引きます。使い切ると、超えた分は上限なしで請求されます。
単価はリージョン(関数を実行する地域)で変わります。日本向けによく使う東京(hnd1)は、米国東部(iad1)より割高です。
| 項目 | 東京(hnd1) | ワシントンD.C.(iad1) |
|---|---|---|
| Fast Data Transfer | 1GBあたり0.16ドル | 1GBあたり0.15ドル |
| CDN Requests | 100万回あたり2.60ドル | 100万回あたり2.00ドル |
| Fast Origin Transfer | 1GBあたり0.27ドル | 1GBあたり0.06ドル |
| Fluid Active CPU | 1時間あたり0.202ドル | 1時間あたり0.128ドル |
| Fluid Provisioned Memory | 1GB時間あたり0.0167ドル | 1GB時間あたり0.0106ドル |
※ 2026年10月25日時点の Vercel 公式「Regional Pricing」より。米ドル・税別。
月額クレジットの75%に達すると自動で通知が届き、超えると日次・週次の利用メールに切り替わります。新しいチームには既定で200ドルの予算が設定され、そこで通知が届きます。ただし、通知だけでは利用は止まりません。
Spend Managementとは?3つのアクション
Spend Management は、設定した金額(On-Demand Budget)に達したときに動く仕組みです。Pro なら追加料金なしで使え、設定には Owner か Billing のロールが必要です。

① 通知を受け取る
予算の50%・75%・100%で、Web とメールに通知が届きます。100%到達時は SMS でも受け取れます。通知の設定は各メンバーが自分で行います。
② Webhookを呼び出す
しきい値に達すると、指定した URL に HTTPS の POST が届きます。Slack への通知や、静的なページへの切り替えなどを自分で組めます。
③ 本番デプロイを一時停止する
「Pause Production Deployments」をオンにした場合だけ、予算に達するとチームの全プロジェクトの本番デプロイが止まります。止まっている間、訪問者には 503(DEPLOYMENT_PAUSED) のエラーが表示されます。
公式ドキュメントは「金額を設定しただけでは利用は止まらない」と明記しています。請求を確実に抑えたいなら、③まで設定することが必須です。

設定方法:ダッシュボードとCLI
ダッシュボードでは、次の手順で設定します。
- チームのダッシュボードで Settings → Billing を開く
- Spend Management のスイッチをオンにする
- On-Demand Budget に金額(米ドル)を入れる
- 「Pause Production Deployments」をオンにし、チーム名を入力して確定する
- 必要なら Webhook の URL を入れる
CLI なら、次の1行で同じ設定ができます。
vercel budgets set --amount 50 --pause
予算は請求サイクルごとの金額です。サイクルの途中で設定すると、それまでの利用額も含めて判定されます。現在の利用額より低い金額にすると、次のチェックで停止などが発動します。
注意点:止まらない費用と「数分の遅れ」
自動停止にも限界があります。設定前に、次の4点を押さえておきましょう。
- 数分の遅れがある: 利用額のチェックは数分ごとです。超えてからも数分は配信と課金が続くため、公式は許容できる上限より低めの金額を勧めています
- 対象外の費用がある: 予算の対象は、月額クレジットを超えた従量課金分だけです。席の料金・Marketplace などの連携・アドオンは含まれません
- 止まらない利用がある: 本番デプロイを止めても、AI Gateway の API キーや v0 の利用は止まらず、予算にも数えられます。Blob などのストレージ費用も続きます
- 再開は手動: 予算を引き上げても自動では再開しません。プロジェクトごとにダッシュボードか API で再開します
特に「全プロジェクトが止まる」点は重要です。1つのチームに本番サイトを複数置いている場合、1つの暴走で全部のサイトが止まることになります。重要なサイトはチームを分けることも検討したいところです。
高額請求の事例
Vercel の費用が話題になった代表的な例が、2024年のアーティスト向け SNS「Cara」です。InfoQ の記事によると、利用者が1週間で約4万人から約65万人に増え、Vercel Functions の費用が約9万8,280ドルに達しました(出典)。
小規模な利用者の事例もあります。Vercel Community に2026年4月1日に投稿したユーザーは、Pro で Build Minutes に659.72ドルが請求されていたと報告し、のちにクレジットで返金されたと書いています(出典)。
2026年6月10日の投稿では、関数の不具合で請求が普段の約4倍の219.59ドルになったユーザーが、再発防止に40ドルの予算と自動停止を設定したと述べています(出典)。
どの例も、予算と自動停止を事前に設定していれば被害を抑えられた可能性があります。Google Cloud でも、2026年10月に利用額の上限で自動停止する予算が正式に使えるようになりました。

IT Picks的な所感
Vercel の Spend Management 自体は以前からある機能ですが、今回 CLI に入ったことで、プロジェクトを作るスクリプトの中で予算も一緒に設定するといった使い方がしやすくなりました。AI エージェントにデプロイを任せる人が増えるなか、費用の上限もコードで扱えるのは筋のよい方向だと思います。
一方で、新しいチームの既定の予算は200ドルです。小規模チームには大きすぎる金額かもしれません。自分で月の上限を決め、--pause で本番の停止まで設定しておく——これが最低限の備えだと考えています。
AdSense 付きのブログを Hobby に置いているケースは、規約上は Pro が必要です。毎月の費用を固定したいなら、定額制の VPS やレンタルサーバーに置く選択肢もあります(レンタルサーバーとVPSの違いと選び方)。無料枠のあるほかのクラウドと比べてみるのも一つの手です。

よくある質問
Q. Hobby プランで突然請求されることはありますか? A. ありません。Hobby は追加の利用を購入できず、上限に達すると機能が止まります。請求が発生するのは Pro 以上です。
Q. 予算を設定すれば、それ以上は絶対に請求されませんか? A. いいえ。チェックが数分ごとのため少し超えることがあり、席の料金・アドオン・ストレージ・AI Gateway の利用なども対象外です。上限より低めに設定しましょう。
Q. 自動停止したサイトは、翌月に自動で戻りますか? A. 公式ドキュメントでは、再開はプロジェクトごとに手動で行うとされています。金額を上げても自動では再開しません。
Q. CLI の vercel budgets が使えません。
A. vercel@59.23.0 以降が必要です(アラート履歴は vercel@65.2.0 以降)。また、チームの Owner か Billing のロールが必要です。
Q. AWS などほかのサーバーレスでも同じ注意が必要ですか? A. 必要です。利用量に応じて課金される仕組みは同じなので、予算の通知や上限の設定を確認しておきましょう。AWS のサーバーレスの新しい選択肢はLambda Web Functionsの解説でまとめています。
まとめ
Vercel の料金と Spend Management のポイントをまとめます。
- Hobby:無料、上限で止まる、商用利用(広告・アフィリエイト主目的など)は不可
- Pro:月20ドル+20ドル分のクレジット、超えた分は上限なしの従量課金
- 東京リージョンの単価:データ転送 1GBあたり0.16ドル、Active CPU 1時間あたり0.202ドル
- Spend Management:通知(50%・75%・100%)・Webhook・本番デプロイの自動停止
- 2026年10月23日:CLI の
vercel budgetsで予算を管理可能に - 注意点:発動は数分遅れる、席料・アドオン・ストレージは対象外、再開は手動
Pro を使っているなら、まず vercel budgets で今月の利用額を確認し、予算と --pause を設定するところから始めてみてください。
