ISUCON2026、AIエージェントが完全自律で優勝【2026年11月】
2026年11月2日、Web サービスの高速化を競う大会「ISUCON2026」の結果が公式に発表され、1人チーム「Typing Bears」が 625,857点で優勝しました。2位に約15万点の差をつけての勝利です。

話題になったのは、その勝ち方です。優勝者本人のブログによると、競技中は AI エージェントが8時間ずっと自律で作業し、人間からの入力は0回だったといいます。公式の集計でも、参加チームの約6割が AI のハーネス(実行環境)を申告しており、ISUCON が「AI をどう走らせるかを競う大会」に変わりつつあることを示す結果と言えます。
この記事はこんな人向けです
- Claude Code や Codex などの AI コーディングエージェントを仕事で使っている・使い始めたい
- 「AI が完全自律で優勝」の話題を見て、実際に何が起きたのかを正確に知りたい
- ISUCON2026 の結果や、参加チームの AI の使われ方が気になる
ISUCON2026で何が起きた?一言でまとめると
一言でいえば、人がほとんど手を動かさない「完全自律の AI エージェント」が、856チームの頂点に立った大会です。まず、公式に確かめられる事実を表にまとめます。
| 項目 | 内容(ISUCON 公式) |
|---|---|
| 開催日 | 2026年10月31日(土) 10:00〜18:00 の8時間 |
| 参加 | 856チーム・1,596名(学生83チーム・171名) |
| 運営窓口 | さくらインターネット(今回から) |
| 優勝 | Typing Bears(1名)625,857点、賞金100万円 |
| 2位・3位 | ゲームセンターヤギ 475,546点、あとで 464,395点 |
| 優勝チームの申告 | 言語 Go、ハーネス Claude Code、モデル Claude Opus 5.5 |
| AI の利用 | レギュレーションで「AI を活用したコードの分析、生成等」の利用は認められている |
「完全自律」「人間の入力0回」は、優勝者本人がブログに書いている内容です。公式の発表は順位・スコアと、申告されたハーネス・モデルまでで、運営が自律の度合いを確かめたものではありません。この記事では、公式の事実と本人の説明を分けて紹介します。
そもそもISUCONとは?
ISUCON(イスコン)は、お題の Web サービスを、決められたルールの中で限界まで速くするチューニングの大会です。2011年に始まり、今回からさくらインターネットが運営窓口を引き継ぎました。
レギュレーションの主なルールは次のとおりです。
- チームは1〜3名。一般枠と学生枠がある
- 競技時間は 10:00〜18:00 の8時間。17時にリーダーボード(順位表)の更新が止まる
- サーバーの役割の変更、DB の変更、キャッシュの追加、別の言語での書き直しなども自由
- 開発に AI を使ってコードを分析・生成してよい
- 競技後に主催者がサーバーを再起動して追試し、スコアが再現されなければ失格
つまり、AI を使うこと自体はルールで認められています。今回の優勝は、そのルールの中で「AI にどこまで任せられるか」を突き詰めた結果です。
優勝チーム「Typing Bears」の結果

公式の結果発表によると、Typing Bears は総合優勝のほか、2つの賞も受けています。
- 優勝: 625,857点(賞金100万円、トロフィー・副賞)
- Go の言語賞 1位: Go で参加したチームの中で最高スコア
- LayerX の「チームメンバー、何人いるんで賞」: 最終スコアを人数で割った値が最も高いチーム。625,857点 ÷ 1人
メンバー一覧でも、Typing Bears は kawasy さん1人のチームです。2位とは 150,311点の差があり、1人チームとしても、AI の使い方としても頭ひとつ抜けた結果でした。

「完全自律」の中身:本人のブログによると
ここからは、優勝者の Yoshinori Kawasaki さん(@kawasy)が Zenn に書いた参加記「ISUCON2026 で優勝しました(当日編)」の内容です(出典)。ISUCON 公式の「関連エントリーまとめ」にも、Typing Bears の参加記として載っています。
① 人間が入れたのは起動の1行だけ
Kawasaki さんによると、競技エージェントへの指示は「CONDITIONS.md を読み、今回の条件を確認してから、ISUCON を解いてください。」の1行だけでした(出典)。ブログでは、人間からセッションへの入力は0回、エージェントが人を呼んだ回数も0回と集計されています。
その回ごとに変わる条件は CONDITIONS.md に、細かい指示はシステムプロンプトに事前に書いておく形です。ポータルへのログインは Playwright(ブラウザ操作の道具)で用意したセッションを渡した、と書かれています(出典)。
② 「いつも通りの土曜日」のための3か月の準備
完全自律にした理由は、土曜日は子どもと過ごすことにしているからだと Kawasaki さんは書いています(出典)。その目標のために、約3か月かけて準備し、評価用の環境で100回以上問題を解かせて仕組みを直したそうです。
競技中、Kawasaki さんは家で子どもと遊んだり、習い事の送り迎えや食事の準備をしたりしていたとブログにあります(出典)。なお準備の詳しい中身は「準備編」として続編が予告されており、この記事の時点では公開されていません。
③ AIがAIを見直す「監査役」
本人のブログによると、メインのエージェントとは別に、判断の記録をチェック項目と照らして見直す「監査役」のサブエージェントを用意していました(出典)。後半のスコアの伸びには、この監査役の見直しが関わったと書かれています。
当日の8時間の流れ(本人のブログより)

Kawasaki さんのブログには、エージェントの判断が時刻つきで記録されています(出典)。お題は写真投稿 SNS の「ISUReal」で、アジアに2台・ヨーロッパとアメリカに1台ずつ、計4台のサーバーが使えたそうです。
| 時刻 | エージェントがしたこと(本人のブログより) | スコア |
|---|---|---|
| 10:19〜 | DB(Postgres)の設定やインデックスを調整 | 4,173 → 16,647 |
| 10:26〜 | 遠くの地域からの DB 問い合わせが遅いと判断し、DB をやめてメモリにデータを持つ形に書き直す | — |
| 11:07〜11:16 | 画像の署名を前もって計算、nginx を外す、自分で入れた検査を外す | 483,958 |
| 11:22〜13:27 | アジアへの応答を少し遅らせ、他の地域の利用者を増やす施策 | 615,485 |
| 15:49 | 監査役の見直しを受けて遅らせ方を調整し、競技中の最高 | 629,638 |
| 17:20〜 | 残り回数から止めどきを計算し、5回目の走行で停止 | 625,857(最終) |
① DBをやめてメモリに持つ大きな書き直し
ブログによると、遠い地域のサーバーからは、DB に SQL を投げるたびに往復で約100ミリ秒かかることが分かり、エージェントは開始から35分ほどで DB(Postgres)をやめる方針を決めました(出典)。読み取りは各サーバーのメモリから、書き込みは1台が順番を決めて配る——という構成です。
② 自分で入れた処理がボトルネックに
署名の検証や画像の検査など、エージェント自身が入れた処理が遅さの原因になる場面もあったと、Kawasaki さんは振り返っています(出典)。それを計測で見つけて外したことで、11時台にスコアが一気に伸びました。
③ 後半は「ばらつき」との戦い
16時以降は、施策の効果よりも走行ごとのスコアのぶれのほうが大きくなりました。ブログでは、同じ構成で12回走らせて 474,987〜629,638点と幅があったと書かれています(出典)。
ISUCON は最後の走行のスコアが最終結果になるため、どこで止めるかが重要です。エージェントは残りの回数から期待値を計算して閾値(562,595点)を決め、それを超えた5回目の 625,857点で止めた、とされています。全体では負荷走行86回・コミット19個でした。
AIを使ったチームはどれくらい?公式の集計
ISUCON2026 では今回から、走行のたびに使った AI のハーネスとモデルを申告する仕組みが入りました。公式の集計(最終走行の申告)は次のとおりです。

| 項目 | 全体 | 上位30チーム |
|---|---|---|
| AI のハーネスを申告(manual 以外) | 389チーム(59.1%) | 25チーム |
| Claude Code | 224組(34.0%) | 21組 |
| Codex | 166組(25.2%) | 6組 |
| モデル: Claude Opus 5.5 | 228組(37.1%) | 21組 |
| モデル: GPT-6 | 65組(10.6%) | 3組 |
上位3チームは3チームとも AI のハーネスを申告しています(1位・2位は Claude Code と Claude Opus 5.5、3位は Codex と GPT-6)。一方で、7位の「新社屋2」は初期値の human・manual・brain のままで、上位30チームにも初期値のチームが5つあります。
なお公式は、申告は自己申告で、実際の利用状況は確認していないこと、初期値のままでも AI を使っていないとは限らないことを注記しています。
AI エージェントにサーバーを触らせる方法は、VPS 各社の MCP 対応をまとめたこちらの記事が参考になります。

注意したいポイント
話題の大きさに比べて、誤解されやすい点もあります。
- 「完全自律」は本人の説明: 人間の入力0回などは本人のブログの集計で、ISUCON 運営が確かめたものではありません
- 準備は人間が3か月かけている: 当日は自律でも、エージェントの仕組みは事前に人が作り込んだものです
- AI なら誰でも勝てるわけではない: 同じ Claude Code・Claude Opus 5.5 を申告したチームは200以上あり、順位は大きく分かれています
- プロンプトインジェクションへの備え: 本人のブログによると、コーディングエージェント対策として偽の指示を含む AGENTS.md が仕込まれていたようだが、エージェントは従わなかったそうです(出典)。誰が置いたのかは書かれていません
最後の点は、AI エージェントを仕事で使う人にも関係します。リポジトリの中の文書に紛れた指示をエージェントが実行してしまうリスクは、実際の開発でも問題になっています。

開発者の反応
Kawasaki さんの参加記には、はてなブックマークで391 users(2026年11月4日時点)が付き、大きな話題になりました(出典)。
t-wada さんは「時代が変わった」と短くコメントしています(出典)。tmtms さんは「別の競技になった感があるな」と書いています(出典)。
takayamaki さんは、今後はエージェントをフル活用する部門と人間だけの部門に分かれるのではとコメントしています(出典)。kiririmode さんは、完全自律の鍵は、試して・測って・直すを繰り返せる仕組みを事前に作ったことだと要約しています(出典)。
IT Picks的な所感
今回の結果で興味深いのは、勝負の中心が「当日にどれだけ手を動かすか」から「当日までにエージェントの仕組みをどれだけ作り込むか」へ移ったように見える点です。本人のブログでも、当日の判断の多くは計測して、仮説を立て、直して、また測るという繰り返しでした。
一方で、人が手を動かしたチームが7位に入っているように、AI を使えば勝てるという単純な話でもありません。同じモデルを使う200以上のチームの差は、何を測らせ、いつ止めさせるかという設計の差だと考えています。
日々の開発でも、Claude Code の auto mode のように承認なしで動かす使い方が広がっています。任せる範囲が広がるほど、監査役のような見直しの仕組みや、プロンプトインジェクションへの備えが大事になりそうです。予告されている「準備編」で、その作り方がどこまで明かされるかも待ちたいところです。

まとめ
ISUCON2026 の結果と、優勝チームの AI の使い方のポイントをまとめます。
- 開催日:2026年10月31日(土)、856チーム・1,596名が参加
- 優勝:1人チーム「Typing Bears」625,857点(2位 475,546点)
- 優勝チームの申告:Go・Claude Code・Claude Opus 5.5
- 完全自律:本人のブログによると、起動の1行のほかは人間の入力0回(運営の確認ではない)
- ルール:AI を使ったコードの分析・生成は認められている
- AI の利用:ハーネスを申告したチームは59.1%、上位30チームでは25チーム
AI エージェントを仕事で使っているなら、任せる範囲と、見直しの仕組みをどう作るかを、この事例をヒントに考えてみてください。
